タイのポピュラーミュージックシーンを語る上で、絶対に欠かせない存在である「カラバオ」。「プアチーウィット=人生のための歌」というジャンルを生み出し、1979年のデビュー以来、味わい深い歌詞とロックのリズムで民衆の心を鼓舞し続けてきた。ちなみに「カラバオ」とはタイ語ではなく、タガログ語で「水牛」という意味。リーダーのエートらが留学先のフィリピンの大学で出会った際につけたバンド名で、それは農作業で辛い仕事を強いられる水牛の忍耐強さを象徴しているという。
このカラバオが爆発的にブレイクしたのは1984年。5作目となるアルバム「Made in Thailand」がカセットテープを500万本売り上げた。当時のタイは人口が約5000万人だから、なんとタイ人の10人に一人が買ったことになる。
日本ではよく「タイのサザンオールスターズ」に例えられるが、2005年と2012年には代々木公園で開催されたタイフェスティバルに出演して会場をカラバオ一色に染め上げたのは有名な話だ。タイ語の歌詞がわからなくても、エートの歌声は感覚的に日本人の心に刺さり、多くのオーディエンスを惹きつけてやまなかった。
そんなカラバオが10月10日、解散することを発表。40年間以上にわたって築き上げてきた歴史に終止符を打つという。リーダーのエートは「歳をとったという現実を受け入れるべき時が来た。ただ、私たちは歳をとってもクールな存在でいる」と語っている。
11月に開催する「カラバオ40周年ライブ」は発売即ソールドアウト。そして、レジェンド最後のステージは2024年4月に予定されている。