外来種の中でも、持ち込まれた地域に大きな影響を与え、生態系を脅かすおそれのあるものを「侵略的外来種」といい、最近タイではある外来種の大量繁殖が社会問題となっている。
その生物というのが、2010年にタイに持ち込まれたアフリカ大陸原産の「ブラックチンティラピア」だ。
淡水、汽水、海水の3つの水源のあらゆる環境に生息し、一度に300個の卵を産み、生存確率は驚異の99%と、恐ろしい生命力と繁殖力でタイでは「悪魔の魚」とも呼ばれている。
あっという間に侵略が進み、タイ水産局の発表によると、現在、バンコク都を含む16県の水域に生息していることが確認されている。
ブラックチンティラピアは在来種を餌とし捕食するため、生態系はもちろん、経済面にも悪影響を及ぼしているという。
この危機的状況にタイ政府も対策を打ち出すことに。
ティラピアを捕食できる在来種の計画的放流、住民らが参加する捕獲大会、1kgあたり15B無制限でティラピアの買取(!?)、また地域によっては「国のためにブラックチンティラピアを食べよう」といった駆除キャンペーンが実施されている。
他の魚に比べて食べられる部分は少ないようだが、焼いて食べると意外にも美味しいらしく、ティラピアを使った様々な料理が開発されているという。
実はこの「食用」にするという方法が、外来種の駆除には適しているのではないかとされている。
以前もタイでイナゴやジャンボタニシが大発生した際、食用として導入された途端に個体数が減少したそう。
果たしてこの食用作戦が吉と出るのか、凶と出るのか、その行方は乞うご期待としておこう。