【亜州ビジネス編集部】
アジア開発銀行(ADB)は20日発表した「アジア経済見通し2021年版」の補足版で、東南アジアの2021年の国内総生産(GDP)成長率予測を4.0%とし、4月の前回発表の4.4%から下方修正した。主要6カ国のうち、新型コロナウイルスの感染が再拡大しているタイやベトナムなど4カ国で予測を引き下げた。
タイのGDP成長率は2.0%にとどまると予測した。4月以降に新型コロナ感染が再拡大し、消費や観光への影響が続くとみている。
また、南部の工業団地などで感染が広がっているベトナムの予測は5.8%に下方修正。同国ではワクチン接種の遅れも懸念されるという。
このほか6月以降に厳格な活動制限が敷かれたマレーシアや、感染拡大で医療体制が逼迫しているインドネシアの予測も引き下げた。
一方、シンガポールは6.3%に上方修正。外需や公共投資の回復を見込んでいる。また、フィリピンは4.5%で据え置いた。政府のインフラ投資が拡大しているほか、個人消費や工業生産がゆるやかに回復しているという。
東南アジア以外も含むアジア開発途上国全体の21年の成長率予測は7.2%とし、前回発表の7.3%から引き下げた。澤田康幸チーフエコノミストは、「アジア・太平洋地域は、新型コロナウイルスのパンデミックからの回復過程にあるが、感染の再拡大、変異ウイルス、およびワクチン接種の不均衡などにより、その道のりは依然として不透明である」と指摘した。