【亜州ビジネス編集部】
中国で電力不足が深刻化する中、米アップルや米テスラの一部サプライヤーが工場の操業停止を強いられている。
報道によると、電力の供給制限は10以上の省で実施されており、中国経済や世界的なサプライチェーンにもたらす影響が懸念される状況だ。一部のエコノミストは、中国経済に関する注目の話題が「恒大問題」から「電力不足」へと変化しつつあると指摘。電力不足を理由に、中国の2021年経済成長見通しを下方修正する動きも出始めた。香港経済日報が28日、外電報道を引用する形で伝えた。
電力供給制限による製造業への影響は、珠江デルタ、長江デルタなど中国の幅広いエリアに広がっている。報道によると、台湾・鴻海精密工業(ホンハイ・プレシジョン・インダストリー:2317/TW)の傘下で、アップルやテスラの部品サプライヤーとされる乙盛精密工業は26日、江蘇省昆山市の工場が10月1日まで操業を停止すると発表した。また、アップルのサプライヤーで、台湾のプリント基板メーカーである欣興電子(3037/TW)は26日、中国子会社のうち3社が30日深夜まで生産停止を余儀なくされたと発表。他の工場で生産をカバーし、影響を最小限に抑える方針を表明している。
このほかにも、穀倉地帯の東北エリアでは大豆加工工場などが電力供給制限の影響で操業を停止したもよう。電力不足が中国の食品供給にも影響する可能性が指摘されている。
こうした電力不足の背景としては、中国政府による環境政策や石炭価格の上昇、電力需要の増加など複数要因が指摘されている。環境規制の影響により、中国の総発電量のうち7割を占める火力発電所が運転抑制を迫られた格好だ。石炭価格の上昇も火力発電所の稼働率低下につながったとみられている。
国家発展改革委員会は先ごろ、「能耗双控」(エネルギー消費の強度・総量のダブル抑制)制度の改善に関する指針を発表。エネルギー消費の大きいプロジェクトを厳しく管理し、地方政府に対してエネルギー消費削減の目標を超過達成するよう求める方針を明らかにしている。
こうした中、野村のチーフエコノミストは江蘇、浙江、広東などでの電力供給制限により、9月の製造業PMIが47.0まで低下すると予想。前月の50.1から低下し、好不況の節目となる50を割り込むとみている。さらに同エコノミストは、電力ひっ迫を理由に中国の7〜9月期、10〜12月期の経済成長率見通しを5.1→4.7%、4.4→3.0%に下方修正。2021年通年についても8.2→7.7%に引き下げた。