【亜州ビジネス編集部】
ファウンドリ世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC:2330/TW)の劉徳音(マーク・リュウ)・董事長は今月初め、米ニュース雑誌『タイム』のインタビューで、依然供給不足が続く車載半導体について、「サプライチェーンに買いだめをしている者がいる」と発言した。同社が買いだめ問題を明確に指摘したのは今回が初めてだ。台湾・経済日報が5日報じた。
劉董事長は、サプライチェーンを詳細にチェックした結果、車載半導体は工場に送付される数量が製品に使用されるよりも多いことが把握できている。これは買いだめを行う者がサプライチェーンに存在することを意味すると述べた。
業界関係者はこの発言について、車載半導体の増産に全力を挙げているにもかかわらず、「努力不足」と批判を受けることへの反論との見方を示した。米国商務省が車載半導体の供給不足の原因を把握するために、世界の大手ファウンドリに重要データの提供を求めた経緯もあり、問題点を明確にする意図があると解説した。
車載半導体は、特に中国の一部の販売企業が買いだめを進めた。米国自動車メーカーは供給不足によって減産を強いられ、従業員の雇用にも影響が出た。董事長は、サプライチェーンへのチェックは、半導体が本当に必要な業者と買いだめしている業者を見極めることにあると説明。需要がそれほど切迫していない業者に対しては、生産対応を遅らせるとの対応策に言及した。
TSMCは今年上半期、重要車載半導体であるマイクロコントローラー(MCU)の生産量を前年同期比30%増産した。通年の増産率は60%に達するとみている。増産対応によって顧客の受注への対応は2カ月前より改善した。このほど受託生産価格を引き上げており、切迫した需要のある顧客に優先的に製品を供給する意図もあったと分析されている。