【亜州ビジネス編集部】
会計系アドバイザリーファームのKPMG FASの報告書によると、2021年の東南アジア8カ国の合併・買収(M&A)は公表ベースで436件、総額1350億米ドルだった。前年比では件数が約1.5倍、金額が3倍近くに上った。
四半期でみると、大型案件が特に集中した第2四半期が626億米ドル(125件)と最多で、第3四半期が406億米ドル(148件)で続いた。ただ第4四半期は160億米ドル(60件)と減少。KPMGは、金利上昇への懸念や新型コロナウイルス流行の再燃に起因する経済不安などが影響した可能性があるとしている。
国別にみると、シンガポールとタイ、インドネシア、マレーシア、ベトナムの5カ国で件数と総額が増加。シンガポールが168件、781億米ドルで件数全体の4割、金額全体の6割を占め最大だった。配車アプリ大手グラブと特別目的買収会社(SPAC)であるアルティメテル・グロースの合併や、ケッペルやキャピタランドなど政府系企業の再編などがあり、活況だった。
シンガポール以外では、
◆インドネシア=188億米ドル(58件)
◆タイ=164億米ドル(41件)
◆マレーシア=123億米ドル(82件)
◆ベトナム=43億米ドル(58件)
◆フィリピン=41億米ドル(26件)――の順に金額が大きかった。
インドネシアとマレーシアでは特にTMT(テクノロジー・メディア・テレコム)セクターのM&Aが活発だった。
セクター別では、TMTが655億米ドル(114件)で最多。これに不動産・インフラ・建設が334億米ドル(81件)で続いた。
一方、域内企業による域外企業に対するM&Aは21年に168件、金額ベースで607億米ドルとなり、17〜21年の5年間で最大となった。特に高付加価値産業の育成や既存産業構造の転換を図るタイ企業の海外展開が活発化し、20億米ドル超の案件は全てタイ企業によるものだった。