【亜州ビジネス編集部】
比亜迪(BYD)や米テスラなど自動車メーカー16社は16日、中国での過度な価格競争を回避することで合意した。業界団体の中国汽車工業協会(CAAM)がこの日上海で開いた業界フォーラムで、16社は「自動車業界の公平な市場秩序維持の承諾書」に署名。今回の合意は、工業情報化部が主導する形で実現した。上海証券報など複数メディアが7日までに伝えた。
承諾書に署名したのは、BYD、テスラのほか、第一汽車集団、東風汽車集団、上海汽車集団、重慶長安汽車、北京汽車、広州汽車集団、中国重汽、奇端集団、江淮汽車、吉利汽車、長城汽車、蔚来集団、理想汽車、小鵬汽車。テスラは合意に参加した唯一の海外メーカーとなる。
承諾書は4項目で構成
◆公正な競争秩序を維持し、異常な価格で市場の公平な競争秩序を乱さない
◆顧客獲得のために、消費者に誤解を与えるような誇大・虚偽広告を行わない
◆高品質の製品とサービスを提供する
◆社会的責任を積極的に果たし、国民経済の成長に大きく貢献する
これら16社は中国市場の新車販売の大半を占める。香港メディアの明報によると、承諾書に合意した吉利汽車の李書福・董事長は、「今年始まった価格競争は、短期的には消費者にとって有利だが、長期的には『悪貨が良貨を駆逐する』ことにつながる」と指摘。「ブランドイメージが損なわれ、自動車産業チェーンに大きなダメージをもたらす」とし、良好な競争環境を創出することで、自動車産業の質の高い発展を実現できると説明した。
長城汽車の穆峰・総裁は今年4月時点で、NEV市場での競争激化に懸念を示し、「中国NEVメーカーで実質的に黒字を確保している企業はゼロだ」と述べている。中国のNEV市場における競争は今後、実力のある企業の「生き残り戦」になると指摘した。
中国での自動車値下げの動きは、テスラが2022年秋に主力車種の価格調整を行ったことを皮切りに拡大。新エネルギー自動車(NEV)からガソリン車へと広がっていった。当初は価格競争に「参戦しない」と明言していた蔚来汽車も、今年6月に値下げに踏み切っている。
CAAMによると、中国の新車販売は今年1〜5月に前年同期比11.1%増の1061万7000台だった。うちNEVは46.8%増の294万台。NEV販売台数が新車販売に占める比率は27.7%に上昇している。