【亜州ビジネス編集部】
欧州連合(EU)の欧州委員会は12日、中国製の電気自動車(EV)に対し、暫定的に最大38.1%の追加関税を課す方針を明らかにした。現行10%の税率に上乗せされると最大で48.1%となる。中国当局との協議で状況が改善しない場合、早ければ7月4日にも適用される運びだ。香港紙・明報など複数メディアが同日付で伝えた。
欧州委は昨年から中国製EVを巡る政府補助金調査を行っており、今回、その暫定結果を発表した。中国政府からの不公平な補助金により、EUのメーカーに経済的な損失を及ぼす恐れがあると指摘している。
メーカー別では、比亜迪(BYD:1211/HK)に17.4%、吉利汽車(175/HK)に20%、上海汽車集団(SAIC:600104/SH)に38.1%の追加関税を課す。他の企業は調査への協力度合いで税率が異なり、調査に協力した企業は21%、応じなかった企業は38.1%に設定された。調査に協力した企業としては、蔚来集団(NIO:9866/HK)、小鵬汽車(エックスポン:9868/HK)、長城汽車(2333/HK)、東風汽車集団(489/HK)、奇瑞汽車などの名前が挙げられている。このほか、中国メーカーだけでなく、中国で生産した車両を欧州に出荷するテスラやBMW、ルノーなど欧米メーカーにも追加関税は適用される形だ。
これを受けて中国商務部の報道官は12日、「欧州側は事実や世界貿易機関(WTO)ルールを顧みず、中国側の強い反対を無視した」と反発するコメントを発表。「強い不満」を表明し、対抗措置をとる方針を示唆した。
欧州メーカーの間でも、追加関税に反対する声が多い。メルセデス・ベンツ・グループは保護主義傾向の高まりにより、全ての利害関係者がマイナスの影響を受けると懸念を示した。またドイツの自動車業界団体は、EUが中国製EVに追加関税を課すことは貿易戦争のリスクを高める一方で、欧州自動車産業の競争力を高めることにはつながらないと指摘した。
もっとも、BYDなど主要メーカーに対する追加関税の影響は限定的とする見方がある。シティグループはこれより先、仮に税率が現行の10%から25~30%に引き上げられた場合でも、BYDが欧州で販売する車の利益率は国内を上回ると指摘した。また別のアナリストは中期的に見て、今回の追加関税が中国メーカーによる欧州での工場建設・拡張計画に影響を及ぼすことはないと指摘。現地生産を行うことで関税の影響を相殺することができるとの見解を示した。