幅広い世代から圧倒的な支持を集め、話題の映画『メアリと魔女の花』では主題歌を担当。トップアーティストとして日本を席巻する「SEKAI NO OWARI(セカオワ)」が、初めてタイの地に降り立った———。
ライブ当日。静かに4人がステージに現れ、“定位置”に着く。セントラルワールド8階にある「SOUND BOX(収容人数2000人)」が、タイ初ライブの舞台だった。「いったい何を唄ってくれるのだろう……」。彼らを初めて目の前にして少し緊張を覚える観客を横目に、一瞬の間を置いてから始まったのは、最新曲「RAIN」のカップリング曲「スターゲイザー(英語)」。ライトに包まれる彼らは、インタビュー時とは全く別人だった。
飾らない人柄のFukaseは、小さな身体でひときわ存在感のある声(オーラ)を放っていた
グループのまとめ役であるリーダー・Nakajinは、3人を支えるように演奏に集中していた
全10曲を英語で歌い切り、タイの人たちの目、耳、心に「End of the World(英名)」の姿を焼き付けた。
「その場その場で最高のライブをしなきゃなと思っています」
— 今年に入ってからはアジア各国でのライブが多いですね
N:そうですね。台湾、韓国、香港、シンガポール、中国の2カ所でやっています。
— タイを選んだ理由は?
F:今回は他のアーティストが主体となるイベントに声をかけてもらいました。
N:すごい楽しみだったよね。
F:そう、タイが決まった時、すごくうれしかったんですよ。友だちから「タイはいいよ。特に離島の海はいいよ」と薦められていたのもあるし、いつも仕事で行くとホテルからスタジオ、スタジオからライブハウスっていう移動しかなくて本当にもったいないと思っていたので、ちょっと今年からはもう少し“遊び”を入れてもいいんじゃないかなと思って。
N:今年から、っていうよりは今回のバンコク公演からね(笑)
今回のライブ後に妊娠を発表したSaori。どんな歓声の中でも耳に届く音色を響かせる
— タイは初めてですか?
F:タイは今まで来たことがないんですよ。本当に初めて。空港からホテルまでしかまだ移動していないんですが、笑顔が多い、親日国だなと感じましたね。
N:そうだね、まだ昨日着いたばかりだからけど、街なかにもチラホラ日本語の看板があるのを見かけまて「おっ!」と思いましたね。
— タイ語はわかりますか?
F:本当にちょっとですね。覚えたそばから忘れていく(笑)
N:アローイは覚えました。ライブでは少し…話すと思います。ラブさんが海外に行くとその国の言葉を覚えるのが早いので…ラブさん担当です。
— 海外ライブで意識することは?
F:うーん、「海外」とひと言で言っても、一つひとつの国で個性が全然違うので。
D:うん、国ごとに反応も全然違う。
F:それこそ親日家が多い国だと日本語の曲をよく知っているし、それ以外だと英語が主な国は英語の曲しか知らなかったり。毎回その都度、人も反応も違うし、中途半端な気持ちで行っちゃうと、なんか足元をすくわれちゃう気がするので…年々、海外ライブは増えていますが、その場その場で最高のライブをしなきゃなと思っています。
— 回数を重ねた手応えは?
N:そうですね。例えば韓国だと、フェスに2回出た後に今年ワンマンライブをやったんですよ。と言ってもフェスの1回目と2回目で4年くらい間が空いてたんですよね。それでもたくさんの人が集まってくれて、それはとても成長を感じたというか、ちょっとずつ聞いてくれる人が増えているなと実感した出来事ではありました。
取材時にはあまり言葉を発しなかったDJ LOVEは、最後尾から観客を煽り、会場中を沸かせていた
「デビュー当時はファンタジーの“ファ”の字もなかった(笑)」
— 映画『メアリと魔女の花』の主題歌「RAIN」について
N:最初の打ち合わせでは映画が未完成の段階だったんですが、監督直々にメアリのキャラクターやストーリーを話してくれて、イメージを膨らませていきました。監督からは「見た人の背中を押せる曲にしてほしい」と言われました。Fukaseの書いた歌詞の始まりに「魔法はいつか解けると僕らは知ってる」とあるんですが、それがこの物語の全てというか…魔法を題材にした物語ではあるんですけど、実際は魔法が使えなくなった後にどうするのかというのがメインであって、人間の成長の物語なんですよね。
F:まだタイでは公開されてないから、あんまり話せないけど…(笑)。タイでは9月公開です。
WEBSITE
http://www.maryflower.jp
— 魔法という言葉はセカオワのファンタジー感にも繋がりますね
F:うーん、「ファンタジー」というイメージを持ってもらっていますが、自分たちで決めたというよりライブのセットがそうさせたんですよね。2013年の野外ライブで、ステージに30mもある巨大な木を作ったりね。僕の夢で見たものをセットにしたのでやっぱり現実とかけ離れたものが出来上がって、そこからそう呼ばれていきましたね。僕らもわかりやすく言っていた時期はありましたけど、そんなに代名詞みたいに大切にしているわけではなくて、その時たまたま僕らのキーワードに「ファンタジー」という言葉があっただけです。だって僕らがデビューした当時なんてファンタジーの「ファ」の字もなかったよね(笑)
N:そうだね(笑)
F:ほんと薄暗ーいバンドだったからね。
N:最初の頃のライブなんてね。
D:ひどかったねー。
F:笑顔の「え」の字もなかった(笑)
N:ずっと床を見てましたね。
— 曲作りに影響を受けるものは?
N:さまざまですね。「RAIN」だとテーマ(映画)ありきで作りますし、その時に気になるものが題材になったりもするし。
D:それこそ「スターゲイザー」は、Fukaseが買った機材が中心で生まれた感じじゃない?
F:そうだね。ベース好きが火を吹いている感じ。
N:そういう時もありますね。
F:僕の趣味で集めていた物が、そういうタイミングで「使ってみようぜ」ってなることもありますね。
N:合いそうだねってなったよね。
— いろんな国を訪れる中で曲作りに影響を受けることもある?
F:ちょうど今ね。タイで曲作りしてますから、もしかしたらタイの影響をこれから受けるかもしれないよね(笑)
N:入るかもしれない。
F:今日、取材の合間にも曲作りをしているんですよ。この部屋の窓の外を眺めていて、なんとなく漠然と歌詞に入ってきているなという感覚はあります。
N:僕も昨日の夜は部屋で編曲をしていたんですけど、街の景色だったり空気感だったりが無意識のうちに影響しているなという感じはありますね。もちろん「タイ」という言葉がストレートに出て来るかと言われたら出て来ないでしょうけどね(笑)
— タイに住むセカオワファンへ
N:今、まだタイに入国して24時間経つか経たないかで、タイという国のこともまだ掴めていなくて、どんなお客さんが来て、どんなリアクションをしてくれるかはわからないですけど、一緒に楽しい時間を過ごして、またタイに戻って来られたらなと思います。
D:そうだね。何度でも呼んでもらって。
N:ワンマンでも来れるように頑張ります!
— 楽しみにしてます!
ありがとうございました!
気さくにインタビューに応じてくれた3人
撮影中には等身大の笑顔も見せてくれた
取材・文 山形 美郷