創立以来60年以上となる池田製作所の技術と経験を生かし
タイで抜きんでた精密プレス加工を展開
取引先企業から称賛される品質の高さ
タイに進出している日系企業ティア1を中心にして、同社はティア2の座を確固たるものにするために、金属プレスによる自動車部品、電気部品(モーター関連)、溶接や電着塗装まで、一貫生産による製造販売を展開している。
日本本社である池田製作所は1947年3月、設立。その長い歴史の間に培ったプレス技術の経験を生かし、1995年にピントン工業団地で進出第一号企業として事業を開始したのが「THAI IKEDA MFG」だ。現在、タイ国内において38社の取引先を持ち、タイでの歴史と確かな実績を持つティア2には数少ない企業の一つだと言える。
2020年度には、取引先企業4社から「Quality Award」などの高品質にまつわる賞を受賞し、これで品質関係11、ベストサプライヤー3、デリバリー6、協力1と、合計21もの賞を獲得。その技術力に対する信頼度の高さはまさに賞賛される域にまで届いている。また、同社はトヨタ、ホンダなどのメーカーからはティア1として認められていて、その評価は年を追うごとに高まってきていると言えるだろう。
自動車のEV化の波に乗るための新たな挑戦が始まる
次世代のモータリゼーションの進化に対応していく。これも同社が掲げる大きなテーマの一つ。現在、自動車産業は“電化”に大きく舵を切ろうとしているが、そういった波に乗り遅れずにEVの部品製造にも積極的にアプローチしていくという。EV車は従来のガソリン車と比較するとその分品点数は3分の2ほど。自動車そのものの構造がシンプルになると共にそこに使われる部品も少なくなるというわけだ。
同社ではブレーキ関連パーツの製造が多いそうだが、そのブレーキ一つをとってみてもガソリン車とEV車では部品の数も種類もかなり異なってくる。自動車がEVへと進化する状況に即して、同社もそれを視野に入れた技術を磨いていかなければならないのだ。ハードルは高いが、同社の新たな挑戦は続いていく。
大きな夢を携え製造業以外の分野へも進出
同社が手掛けている品目の9割以上は自動車関連の部品だが、それ以外の領域への挑戦もすでに始まっている。電気製品などの新しい分野でも、持ち前の技術力が発揮されることは確かで、今後の活躍がとても期待されるところだ。2021年初頭にはさっそく電気関連製品の大型受注があり、その背景には電機メーカーの発注先が中国からタイ国内へシフトされるという、同社にとってはまさに追い風が吹いたことになる。
また、同社では多角経営の一環として、製造業とは全く異なるフィールドへのチャレンジも始まった。それはリラクゼーション分野で、まさに意外な業種。2020年、パタヤのターミナル21近くで「Mail Relaxation」という店舗名でリラクゼーション事業を開始。各種マッサージ施設にネイルサロンを併設しているという。
こういった異業種経営などを一つの足掛かりとして、製造業ならではのB to Bに特化した感性を少しずつB to Cに向け、コンシューマー(一般消費者)のマインドを勉強する。そして、そんな挑戦を継続していきながら、それを一つの夢につなげてみたいと平澤社長は語る。
「本丸である製造業はもちろん精進し続け、さらなる高みを目指していきたいと思っています。それにプラスして思い描いていることは、このタイ東部という恵まれた環境を製造業以外の分野でも生かしたいということです。昨年開業した施設はパイロットショップの意味を兼ねていて、そこで勉強を重ねながら、将来的にはパタヤに一大リラクゼーションゾーンのようなものを創造してみたいとも考えています」。
4つの「Quality Award」に輝く技術力
その背景にある同社の強みとは
顧客の要望をしっかりと受け止めて、それをしっかりと製造の現場に落とし込む。一見当たり前のことのようだが、この部分を徹底することは実に難しく、根気が必要だという。同社の場合は取り扱う品種のカバー範囲が広く、品質管理体制を維持するのも並大抵のものではない。
また、同社の品質システムはIATF16949に準じたもので、それは自動車産業の国際的な品質マネジメントに特化したもの 。この品質システムをしっかりと確実に実践することが重要。この中には実にさまざまな要求事項があり、そこに費やす努力を惜しまないことも大切。そして、最も大切にしていることは、顧客の要求(CSR)をしっかりと現場に落とし込み、維持管理することが重要なのだという。
そのような現場で、仕事のやりがいを永野竜一QA/QCゼネラルマネージャーはこう語る。「我々にとって当たり前のことを地道にやることによって、お客様から評価され、次のステップへ向かうモチベーションへと繋がります。また、お客様から素晴らしい賞を頂くことで、タイ人スタッフ全員の士気が上がるのも有り難いことです。このように地道に努力した結果が形に表れることが、我々のやりがいと言えるのかもしれません」。