AEC発足でタイ隣国に注目北米でブランド確立が課題
社長 谷 康行
《プロフィール》
たに・やすゆき
■1969年、大阪府生まれ。92年、近鉄エクスプレス入社、大阪にて航空輸出営業所配属後、東南アジアと日本勤務を経て現在に至る。
■座右の銘:この世に客に来たと思えば何の苦もなし
■愛読書:坂の上の雲(司馬遼太郎)
■趣味:名所旧跡巡り(できていませんが)
■愛用の腕時計:TISSOT
■愛用の鞄:Smythson
昨年はAPLロジスティクスを傘下に加えましたが、近況はどうでしょうか
経済成長が鈍化していることもあり、物流の動きはスローですね。航空貨物も2011年の洪水後の復興需要をピークに、市場での大きな伸びは期待できない。ただ、そうした状況下においても、弊社単体では今年は昨年同様、過去最高の取扱物量を記録する勢いで増えております。APLL買収のシナジー効果はあると思います。APLLは北米やアジア向けの取扱を得意としていますので、事業戦略上において効果は出ていますね。
北米向けに力を入れているようですね
今年は中期経営計画(3ヵ年)の初年度(16~18年)です。その中で、掲げているのが、TPEB(トランス・パシフィック・イーストバンド)の拡大。太平洋側のアジア、北米向け航路(輸送)。当然、日系企業ですので、日本発着のビジネスは順調ですが、グローバルを見据えると、太平洋地域を押さえることが非常に重要。TPEBのビジネス拡大を中心に進めていこうと考えています。北米で弊社のブランドを確立し、海上、航空も増やし、全体のキャパを拡大したい。
タイよりも北米向けのTPEBに注力されているのでしょうか
海上需要の拡大と広告に載せているバンコクゲートウェイという混載もアメリカがベースになります。どっちも北米向けの航路を強めるためです。これを基本路線とし、国際事業を伸ばしていこうと考えています。北米へのパイプを太くするのが戦略であり、船はTPEBキャンペーン、航空はバンコクゲートウェイを推し進めています。
タイについてはどうでしょうか
タイ単体でビジネスをするのではなく、近隣との関係が大切。AECが発足しましたし、労働集約型の産業がカンボジアやミャンマー、ラオスに移るため、メコン経済圏としての物流網をきちんと構築しなければなりません。昨年カンボジアの国境まで約1時間のプラチンブリー県に倉庫を作り、第2棟の計画を進めています。ミャンマーはまだ駐在員事務所ですが、今後は法人化も検討するでしょうし、カンボジアやベトナム、マレーシア、シンガポールとの陸送サービスを含めた物流網をさらに充実させ、整備していきたいですね。
3ヵ年計画はタイ法人においての計画ですか
グループ全体の課題ですね。そのなかから各拠点に落とし込まれた目標があり、タイは前述したように北米中心にブランドを確立することが至上命題。さらに国内では国境ビジネスの強化と整備でしょうね。タイ国内というよりはメコン地域を意識して物流を構築したいです。あとは人材の開発、教育といったことも挙げられます。従業員数は約1400名。
社長直轄の新たな人材開発の組織ができたそうですね
各部署の活性化、情報共有を目的とした「TSI」というプロジェクトを開始しました。Tactics Strategy Initiativeの略でして、小職をリーダーとした組織の横断を目的に、全社的戦略活動の推進を狙いとしています。
明確な評価制度を定めるなど、我々としては従業員の動機づけでもあり、まずはあらゆるチャンスを与えてあげることが大切です。あとはローテーションですね。日本では、航空から海上の部署、営業から事務職などの異動は当たり前のようにありますが、海外ではあまりポピュラーではありません。もっとジョブローテーションなどの経験を増やし、タイ人が幹部に上がっていく仕組みにしたいですね。
海外の赴任歴を教えてください
マレーシア、シンガポール、そしてタイは丸4年が経ちました。現地法人のトップをやらせていただくのは今回が初めて。日本で営業所長の経験はありましたが、規模、運営内容や求められるものが異なるため、大変勉強になります。特にビジョンを描き、ビジネスモデルや戦略の構築を、経営計画にまとめ実行していくことには、やりがいを感じています。
週末はどう過ごしていますか
仕事の意味合いもあって、ゴルフはほぼ毎週やっていますが、それ以外は家族と一緒に過ごしています。映画を観に行ったり、食事に行ったり、一般的な家族との過ごし方です。あとはコンドミニアムに付いているプールに入ったり、ジムで汗を流しています。とにかく体を動かすことが好きですね。
編集後記
AECが発足し、域内経済回廊を使った物流の活発化が期待されるなか、物流業界で注目度の高い国際総合物流企業“近鉄エクスプレス”。昨年、同社がシンガポールの物流大手APLロジスティクスをグループ化したことは、周知の通りだが、今年はそのシナジー(相乗効果)が、否が応でも注目される。おりしも3ヵ年の新中期経営計画も開始し、タイにおける新戦略も盛りだくさん。一心精進に語る中にも気炎上がる闘志がみなぎっていた(北)