携帯で“ピッ”と通れる改札も近い? タイのキャッシュレス化の新潮流はじまる
「世界で最もキャッシュレス化(現金離れ)が進むスウェーデンを目指す」。アピサック財務相は、タイ政府が進める「National e-Payment Master Plan」を掲げながらこう宣言する。計画では、現金でのやり取りをなくせば、年間700億バーツのコスト(予算)削減につながるという。ぶち上げるのは勝手だが、先進国でも“遅々として進む”キャッシュレス化が、タイで加速度的に普及するのだろうか。
すると1日、そんな疑問を払拭するかのような、ニュースが舞い込んできた。バンコク都民の足、BTS(高架鉄道)とSNS界の巨人LINEが、合弁会社設立を発表したのだ。両社によると、LINEの電子決済「LINE Pay(ライン・ペイ)」とBTSが発行する乗車券と決済機能を持つラビットカードを統合させ、“ラビット・ライン・ペイ”なるサービスを開始するという。ラビットカードはチャージした分だけ、乗車券及び加盟店で使える日本でいうPASMOのような存在。一方、ライン・ペイは、オンライン上で予めクレジットカードを登録、もしくはお金をチャージすることで使えるイーペイメント。タイのLINEアプリ利用者は、世界で2番目(約3300万人)に多く、逆にラビットカード(500万枚)は、BTSで日常的に使われ、両方共タイ人にとっては、馴染み深いサービス。
LINE Payのイー・チンウー氏は、提携について「マクドナルドやテスコ・ロータスで使えるラビットカードとオンラインショッピングのラサダやエンソーゴーで使えるLINE Payが統合することで、キャッシュレスのムーブメントが起こるだろう」と得意満面。BTSのネルソン社長も「タイ初の試みで、キャッシュレスが全国に広がる」と呼応する。
サービス開始後(本年度末予定)は、水道・電気・携帯料金や荷物受け取り支払いのほか、LINE登録者への送金なども行えるという。
ただ、LINEの誤送信をした話はよく聞くし、野暮な疑問だが、誤って違う人に送金してしまう事故が増えるのでは、と危惧する編集子は古いのだろうか。いずれにせよ、タイでも、BTSの改札やスーパー、コンビニのレジ前で、携帯をかざして支払う姿を目にする機会が増えることは間違いない。