「目指すのは、往診型のホームドクターです」
《プロフィール》
バンコク駐在員事務所 首席駐在員 佐近 友昭
さこん ともあき
■1970年生まれ。大阪府出身。東北大学卒業。1993年入庫、現在に至る。
■座右の銘:感謝と前向き
■愛読書:東野圭吾シリーズなど
■尊敬する人物:マハティール首相(マレーシア)
■趣味:街歩き、バドミントン
■バンコクの行きつけの店:バミーコンセリー(トンロー駅近くのバミー店)
■よく見るまたは、活用しているウェブサイト:TED、各種ニュースサイト
日本政策金融公庫の役割を教えてください
当公庫は、100%政府が出資する政策金融機関で、2008年に、国民生活金融公庫、農林漁業金融公庫、中小企業金融公庫などを統合して発足しました。略称は「日本公庫」です。中心事業のひとつが中小企業に対する融資や証券化支援で約4.4万社(中小企業のみ)の顧客がおり、そのうち海外現地法人は7000社を超え、ASEANは実に3割超となる2382社(2018年3月現在)となっています。そのうちタイは874社で、バンコク駐在員事務所の役割としては、当然、直接融資といった金融事業ができませんので、大きくは情報提供といった現地サポートが中心となります。特に中小企業は、現地の日本人駐在員数も少なく、多くの業務を兼務します。不慣れな環境で、営業、労務管理、経理など幅広い業務をこなすことは難しいでしょう。
そこで、公庫が掲げるのが「往診型のホームドクター」としての支援です。進出前であれば、現地法人の立ち上げや経理関係など、予算に応じて会計会社やコンサルティング会社を紹介するほか、ある特定の事柄で企業が悩んでいるのであれば、同様の課題を克服した企業を紹介いたします。
一方で、資金に関わる相談に関しては、いわゆる親子ローンですね。日本の親会社に海外展開資金を融資し、それを現地法人の事業に使っていただき、もし、現地通貨(タイバーツ)で必要な場合は、提携するバンコック銀行を通して、スタンドバイ・クレジット制度を活用します。あらゆる相談に応じる、まさに“よろず屋”ですね。
地域金融機関との連携にも力を注いでいますね
進出する多くの地域金融機関との連携で象徴的なのが、来年1月30日の開催で12回目を数える「日タイビジネス商談会」ですね。これは、在タイ日系企業とタイ地場企業の取引拡大を目的に開始しました。主催は公庫と盤谷日本人商工会議所(JCC)、タイ投資委員会(BOI)です。JCCとBOIが入ることで日タイの大手企業も参加します。さらに、公庫の顧客に加え、七十七銀行、名古屋銀行といった地銀や第二地銀、信用金庫などの日系金融機関数十行の顧客も参加することで、タイ最大級の日系企業へのアプローチが可能となりました。おかげさまで、前回は330社が参加し、今回は約400社が決まっています。これほど大きなビジネスマッチングイベントはないと思いますよ。最大の特徴は、参加企業の希望に基づく「事前マッチング制」ですね。サプライヤーは、事前に組まれた商談スケジュールに従って、バイヤーのテーブルを訪問し、商談を行うスタイルです。これだと商談効率が高まるんです。つまりは、最小限の労力で最大限の効果をだせる方法として取り入れています。
他にも、テーマごとに、地銀数行と組んだセミナーも開催しています。例えば、自動車業界の行く末を不安視する企業相談を多く受けている銀行とは、電気自動車の取り組みをテーマに開催しました。さらに、ベトナムやインドネシアといった、他国でも開催しています。
タイは二度目と伺いました
意外かもしれませんが、公庫の海外拠点は中国・上海とここバンコクにしかなく、当事務所は、ASEANのリージョナルヘッドであり、インドとバングラデシュも管轄しています。バンコク事務所は08年の統合により誕生しました。振り返れば、統合前の06年にマレーシア・クアラルンプールに赴任し、統合と同時(08年)にタイへ横滑りとなり、11年までおりました。その後、日本へ戻り、再赴任は16年からですね。今では、大型の製造業の進出は少なくなりましたが、サービス業や流通業の進出は増えており、日系企業にとってはまだまだ有望な市場であることを肌で感じております。タイ生活は、充実の一言でしょうか。
趣味の街歩きや、タイに来てバドミントンをはじめました。子どもは2人おりますが、マレーシア時代に英語教育に触れたこともあり、高校生の長女はシンガポールですし、下の子はバンコクのインターナショナル校に通っています。公私共に、やりがいのある生活を送っています。